「幸せはいつもちょっと先にある」を読んで
概要
なんとなくタイトルに惹かれて読んでみた。
こういう本にありがちななんとなく押し付けがましい展開ではなく、1つ1つじっくりと事実にもとづいて論理展開していたため、すごくしっくりと理解できる内容だった。
事実に基づくというのは、実際に実験してみてこういう結果だったからこれは正しい、ということです。本書ではたくさんの実験内容が出てきます。
また、話しのちょいちょいに軽いジョークが入っているので読みやすい。集中力がプリッと切れそうなところでそういうのが入っている文章とかってすごく読みやすい。joel on softwareみたいな・・・まではいかないけど近いノリ。(joel on softwareは古い有名な記事がたくさんあるけれど、面白いから読んでないソフトウェア開発関係者は是非読んでみてください。ネットで普通に見れます。)
「幸せはいつもちょっと先にある」っていうと、幸せは目の前にあるのになかなか手が届かない・・・未来の幸せを予測するときに、旅行行く前はすごい楽しみだったのにいざ行ってみるとそうではなくてとか、逆に行く前は憂鬱だったのに行ってみるとすごい楽しかったとか、そういうことってありますよね。
これを認知科学にもとづいてなぜそういった現象が起きるのかということが書いてあります。
じゃーどうすればいいの?ということで結論まで導出しています。
なぜ幸せはいつもちょっと先にあるのか
人間はちゃんと未来は正確に予測できないということです。幸せになるために未来を予測して、今すべきことを判断するのですが、そもそも正確に予測できないから幸せになれない。
作者は、これに対してまず幸せについて述べます。それから、3つの観点からなぜ自分の幸せのために未来を予測できなきか、その脳みその欠点を述べています。
1. 物事を正確にとらえていると思ってしまう
本書で、二人の話しが出てきます。
労働運動の活動の末、裁判にかけられ死刑になってしまった男と、大企業を立ち上げて大成功をおさめた後に、自殺してしまった男の二人です。
どちらが幸せだったんだろうか、と考えるときに、とりあえず前者は不幸だったろうな、と想像します。そして、それが正しいと思い込んでしまいがちということです。
これを実在論と言うみたいです。心に思い浮かんがものが、そのまま実在すると考えること。本来はもっと事実をかき集めないといけないのに。
2. 今を基準に考えてしまう
これもわかりやすい例えがありました。腹が減った状態でスーパーに買い物に行くと、いつもより多めに買い出しをしてしまうということです。
これは現在主義。現在の気持ちをもとに、過去のことや未来のことを考えてしまうこと。
3. 合理化してしまう
たとえ失敗しても、辛い避けようがあった過去があったとしても、「でもいい経験になった」と考えてしまうこと、つまり合理化です。物事を納得いくように考えてしまうことです。
まぁこれはポジティブシンキングとも言えますが。
上記3点の欠点から、予測が外れがちと言っています。
自分で予想できないならどうすれば?
自分の脳みそが信用できなければ、似た経験をしている人に、「今どんな気持ち?!教えて!」と聞けば良いと述べています。
とはいえ、自分の脳みそが信用できないっていうのはちょっとつらくて受け入れ難いですね。上に3点簡単に説明しましたが、本書ではここの説明に200ページ以上かけて説明しており、納得できない方は本をしっかり読んでみると良いと思います。
- 作者: ダニエルギルバート,Daniel Gilbert,熊谷淳子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/02
- メディア: 単行本
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買ってみるか、2007年2月の本なので、おそらくどこの図書館においてあると思うので借りてパラパラ読んでみるのをお勧めします。
ちなみに認知科学については下の本の最初の概要での説明がわかりやすかったです。
- 作者: 安西祐一郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/01/01
- メディア: Kindle版
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kindle版の立ち読みだと冒頭部分のみでも無料で読めるのでおすすめです。入門って書いてある割に中身は僕にはちょっと難しく感じましたが…。